「なんで僕を起こしにくるのは有志なの?学校で目があっても無視するの?有志には笑いかけるのに僕には……青は僕のことがホントに嫌いなの?僕はこんなにっ………」


そこまで言うと、真昼はしまった、という顔をして、口をおさえた。


わたしたちは呆然として見つめあった。


お互い気持ちが多いに乱れているのが分かった。


しばらくして、わたしはためらいながらも口を開いた。


「あの、ね、昼休みに言ったことは、嘘だから。」


「…へ?」


目を見開いた拍子に、真昼のまなじりに溜まっていた涙の雫がポロリと頬を伝う。


わたしは胸に手を当てて、深く呼吸をすると、にっこり微笑んだ。


「ごめんね、あの時は腹が立って、思ってないこと言っちゃったの。真昼のこと、嫌いなんかじゃないよ。」


真昼の体から、力が抜けるのが分かった。


それを見ながら、わたしの胸にずきりと痛みが走る。


本当の姉弟だったら、喧嘩して、お互いのこと嫌いだなんだって言ったあとでも、冷静になれば嘘だって分かるのに。


五年も一緒に住んでるのに、わたしたちはこんなにも姉弟になりきれていない。


「よかった」


真昼の顔に笑顔が戻った。


泣きぬれた顔に、花のような美しい笑みが咲く。