「ただいま」


「おかえりなさい」


帰宅してから、真昼はまだ帰っていないことを確かめると、わたしは真昼を玄関で待ち伏せていた。


ドアを開けた目の前にわたしがいるのを見ると、真昼は驚いた顔をした。


「あれ……青……」


そこまでいうと、いつもの小馬鹿にするような笑みを浮かべて言った。


「どうしたんですか、お姉さん。弁当忘れていったこと怒ってるんですよね、しょうがないじゃないですか、人間なんだから忘れ物くらいしますよ。」


おどけた口調で言いながらも、目の色はわたしの反応を伺っている。


「わざと忘れていったくせに」


ちくりと言うと、真昼は言葉に詰まったようで、少しうつむいた。


「わたしたち姉弟って知られてないんだから、変な噂立つって分かってて、わたしに嫌な思いさせたくて置いてったんでしょ?」


「……嫌なことなの?」


ふいに真昼が顔をあげた。


色素の薄い瞳に浮かぶ涙を見て、わたしはハッとする。


真昼の声に涙がにじむ。


「嫌なの?そんなに嫌なこと?僕と噂になるのが?姉弟だってことも、なんで隠さなきゃなんないの?わかんないよ」


言い出したら止まらなくなったらしく、真昼はポロポロと涙をこぼしながら続けた。