悪魔的に双子。

その日の夜、有志に頭を下げられた。


「お願いっ、明日からいつもより一時間早く起こして」


「…は?」


思わず声が冷たくなった。


有志を一時間早く起こすってことは、わたしも早く起きなきゃいけないってことだ。


「なんで?」


わたしの問いに、有志はおずおずと顔をあげていった。


「朝練が始まるから」


「え?でも……」


わたしは戸惑って首をかしげた。


「朝練ってしちゃいけないんじゃなかったっけ?」


うちの中学校は周りを住宅地に囲まれている。


朝練をすると近所から苦情が来るので、運動部の朝練は全面的に禁止されているのだ。


「うん。でも、次の試合まで、期間限定でできることになったんだ。サッカー部の新しい顧問の先生が熱心な人でね、朝練させて下さいって近所まわったらしいよ。で、サッカー部がするんだったら他のとこもやらなきゃ不公平になるってことで、バスケ部もおこぼれでできることになったらしい。」


「へぇ」


近所中まわるって、熱心な先生もいたもんだ。


「「尊敬にあたいするね」」


ひとり言としてつぶやいた言葉が、有志と重なった。


有志も驚いてわたしを見る。


そして照れたように笑った。


「なんかはもったの、すごく久しぶりだね。」


「うん」


わたしもなぜか照れが伝染して、二人仲良く、えへへ、と笑った。


「じゃあ、一時間早く起こせばいいのね」


「うん、迷惑かけます」


「はぁい」


「おやすみ、青」


「おやすみ、有志」


この時は、サッカー部の熱心な顧問のことを恨めしく思うことになるなんて、考えもしなかった。