「どうして……有志」


うつむいた唯流の声がふるえている。


有志もしまったと思ったのか、口元を両手でおおった。


さすがにお父さんも見てみぬふりができなくなったのか、立ち上がって、


「何で有志は唯流を起こすのは嫌なんだ?」


と有志に尋ねた。


別に普通の声音だったけど、動転気味の有志には怖いものだったらしく、泣きそうに顔をゆがませた。


「や、やだっていうか」


その後が続かず、有志は縮こまってうつむいてしまった。


「……もう、いいや」


ふいに、この微妙な空気の元凶、真昼が、のんびりとした声をあげた。


「でもっ」

「もういいじゃん、唯流。誰に起こしてもらうとか、くだらないことで騒いで、ごめんね。」


そう言って、優しく唯流の頭をなでる。


真昼唯流の双子は、わたしたちとは違って、真昼の方がだいぶ背が高くなっているから、本当に、妹を気遣うお兄ちゃん、といった感じだった。


しぶしぶとだが、うん、とうなづく唯流をみて、


「なんだ、解決か」


とお父さんは能天気に自分の椅子に戻って再び新聞を読みはじめた。


わたしたちも、さっきのへんてこりんな言い合いが嘘のように、何事もない顔をしてそれぞれの席につき、朝ごはんを食べ、学校へ行く準備をした。


消化不良に感じているのは、わたしだけなんだろうか?


そう思いながら、鏡の前でセーラー服のリボンを結んでいると、横を通り過ぎるときに、真昼がわたしに囁いた。


「愉快なことは、好きだよね?」


ひやりと背中にいやなものが伝う。


どうせいつもと変わらないふざけたからかい文句だろうと自分に言い聞かせたが、鏡ごしに合った真昼の目が脳裏にやきついて離れない。


からかうように笑んだ口元の印象をぬぐいさる、怒気の滲んだ瞳。


怒られるようなことをした覚えはない。


しかし、真昼はわがままだ。


どんなに理不尽な理由でも、真昼の喚起に触ったなら、その怒りを受け入れるしかない。


あの双子ときょうだいになってからというもの、わたしは嫌というほど思い知らされていた。