ママはわたしをすぐ先にあった服のお店の中に引っ張り込んだ。


いらっしゃいませ、という店員さんの声の余韻も消えないうちに猛烈な勢いで服をあさっていく。


「これ、とこれ。ほら、持って。あと、あそこのマネキンが着てるのも脱がしてきて」


「マ、ママ、こんなにどうするの?」


「どうするって、買うのよ。それであなたが着るの」


……わたしが着るのか。


片っ端から手にとって、気にいったものを次から次へとわたしに渡してくる。


これ全部わたしが着るのか。


いい加減手がいっぱいになってきた。


あと人の目が痛い。


ママの猛烈な勢いと服を抱えるわたしの姿はやはり異様らしく、他のお客さんにちらちら見られている。


顔が火照る。


「………このくらいか」


ママがそう言って立ち止まったとき、わたしは心底ほっとした。


ギョッとする店員さんに服の山を差し出し、一万円札を無造作に何枚も置く。


わたしはひたすらぽかんとしていた。