悪魔的に双子。

帰りの電車の中で、百合人くんがぽつりぽつりと話しはじめた。


「俺がまだ小さい頃に、もっと小さい真昼と唯流を連れたあみこが帰ってきた。


その頃のあみこはなんか疲れてて、今みたいな笑顔なんて全然見られなかった。


お母さんもあみこに笑顔吸収されてるみたいに笑わなくなって、正直あの頃は、あみこのこと大嫌いだった。


セットで真昼と唯流のことも嫌いだったよ。


お母さんは真昼と唯流の顔みるたびになんとも言えない顔してたしね。


あの二人、父親そっくりなんだよ。


まぁ、あみこに全然似てないの見れば分かると思うけど。


だから、俺、二人と暮らしてた間は目一杯二人に嫌な思いさせてた。


知ってた?俺が二人に嫌なこといっぱいしてたこと。」


顔をのぞきこまれて、わたしは仕方なくこくりとうなづいた。


百合人くんの嫌がらせが巡り巡って、わたしと有志に被害をもたらしたことも知っている。


「ある日さ、俺二人を連れて近所の川に遊びに言ったんだ。


真昼がトイレに行くって言っていなくなった後、唯流に家から水筒持ってきてって頼んだ。


ん?あの頃の唯流は案外素直な子だったんだよ。


今みたいになったのは、もしかしたら半分くらい俺のせいかもね。


えっと、真昼が先に戻ってきて、唯流は?って聞いてくるから俺、川に流されたって嘘ついたんだ。


ホント軽い気持ちだったよ。


今思うと、自分の浅はかさと残酷さにぞっとするけどね。


真昼は真っ青になって、川ん中に入っていった。


馬鹿だよね、泳げないくせに。


自分が入ってったって意味ないし。


俺はそれを面白がって見てた。


嘘だよ、って叫ぼうとしたとき、真昼の体がぐっと沈んだように見えた。


あっ、て思ったときにはもう流されてて、『助けてっ』っていう声が小さく聴こえた。


俺どうしていいのか分からなくて、真昼が遠くなって行くのを突っ立って見てた。


幸い近くでキャンプしてた大人の人たちが助けてくれたんだけど、もし間が悪ければ真昼は俺のせいで死んでた。


これでわかるでしょ?唯流が俺のこと嫌ってる、むしろ憎んでるわけ。


大切な真昼を殺されかけたんだ。


憎まれて当然。


でもあの時一番俺に怒ったのはあみこだった。


事情を洗いざらいぶちまけた途端、俺に飛びかかってきた。


顔殴られまくったよ。


すごいひっかかれたしね。


あの時はただただ怖いだけだったけど、今思い出すと、母は強しって言葉を思い知るよ。


あの時から急に本能に目覚めたみたいにあみこは強くなって、真昼と唯流の母親らしくなった。


それからどのくらい経ってからかな、あみこが青ちゃんのお父さんと結婚して、うちを出てったのは。


あの時は、もしかしたら二度と会うことないんじゃないか?って思ってたのに、まさかまた一緒に暮らすことになるとはって驚いてる。」