悪魔的に双子。

「お母さん、イヤフォンから音楽が聴こえる。音でかすぎだろ。」


「そう?お母さんみみ遠くなっちゃったのかしら」


「その前に今聴いてないんなら止めとけよ。電気の無駄」


「もう、あんたは小姑か」


コジュートってなんだっけ


ぽんぽん言葉の押収をする二人を前に、わたしは時々そんなことを思いながらずっと黙って聞いていた。


「おや、百合人くんかい?また一人でえらいねぇ」


今しがた目が覚めたらしい隣のベッドの人が聴こえた。


「今日は一人じゃないよ。それに俺高校生だよ?一人でお見舞いぐらい来るって」


あきれと面白がっているのがにじむ口調で百合人くんが言い返した。


「そうそう、まだ高校生のくせにすっかりやかましくなっちゃって、わたしに説教するのよ」


明るい声でちゃかす百合人くんのお母さんに、


「お母さんは思考回路だけ未だに子どもだよね」


と百合人くんが言い返した。


なんというか、百合人が生き生きしている。


無表情は相変わらずだが、声にしっかりと感情がこもっている。


少しショックだった。


やはり、母親の成せるわざ、というわけだろうか。


「青ちゃんは今中学二年生よね?部活には入ってるの?」


突然話題を振られて、あたふたしながらも、ゆっくりと答えた。


その間も、百合人のお母さんは優しい目でわたしを見ていて、なんだかこそばゆかった。


「青ちゃんはすごく料理が上手なんだよ」


百合人がおおげさにわたしの料理の腕前を褒めはじめて、おかげで頬が真っ赤になった。


話してる間ずっと感じられる、温かな雰囲気。


これはもちろん百合人くんと百合人くんのお母さんだからこそなんだろうけど、母子の特別な空気みたいなものを感じた気がした。


少し、うらやましい。