噂なんてものは一瞬で広まる。


今頃、あの時体育館にいなかった子たちも、唯流が大告白をかましたことを知っているだろう。


唯流はこの狭い中学校社会の中では結構な有名人だ。


よって噂の加速度や話題性もいや増す。


有志の知名度はうなぎ上り。


有志の心を埋め尽くす恐怖は増殖をつづける。


けらけら笑うだけでのんきな真昼は頼りにならない。


真昼は良いんだろうか。


何せ騒ぎの元凶は真昼の、同じ顔した双子の妹だ。


真昼のまわりもめんどくさいことになると思うんだけど。


すんすん鼻をすする有志の背中をなでながら、有志とは真逆の意味で赤くなった目をこする真昼に話しかけた。


「真昼、たぶん有志の次くらいに真昼の被害が大きそうなんだけど、そのへんに関してはどうでもいいの?」


真昼はしばらく動きを止めてわたしをじっと見つめると、口を開いた。


「それを言うなら青だって……」
「あれ、真昼くん?有くん?あ、青ちゃんも」


その時、聞き慣れた軽そうなうえに能天気な声が聞こえて、真昼はふっと口をつぐんだ。


わたしはいきなり現れた予想外の人物たちに首を傾げた。


「あれ…新田…くんと田城くん。」


わたしのぎこちない口調に、新田がへらりと口を緩めて笑った。


「そんなとってつけたようにくん付けしなくても、新田でいいよ、青ちゃん。あ、それか龍かっこはぁとでも可。」


………これは無視した方がいいんだろうか。


「バカか。園村さん困ってるだろうが。ばか」


いつになく冷たい口調の田城。


しかし、冷たかろうがなんだろうが新田に話しかける田城をはじめて見て、少し感動してしまった。


「ばかじゃねぇし。つぅかバカって二回ゆうなよ」」


「じゃ、アホに昇進させてやる。」


お互いにそっぽを向いているが、軽口をたたいているように聴こえなくもない。


「……うっ」


気づいたときにはボロっボロ涙をこぼしていた。