ピンポンパンポンっ


真昼と二人、気まずい空気の流れだした時に何の救いか、校内放送の音がなった。


『ごほんごほん。生徒のみなさん、並びにご来校の皆様、文化祭を楽しんでいるでしょうか?
ただいまから、風道中学文化祭恒例行事、『風道中生、叫びます‼』を開始します。えー、生徒がマイクに向かって叫ぶだけの行事です。若干うるさいかもしれませんがご了承を。真に迫る主張にはエールを、アホな告白はどうぞ、存分に笑ってやってください。それではトップバッター、三年二組の戸波 悠太くん、どうぞ!』


はきはきした女の子の声が敷地中に流れ、恒例行事がはじまった。


「今の声って生徒会長だよね」


隣の真昼に話しかけると、腹の立つことに何の反応も返ってこない。


目は真っ赤のまま、口はへの字に曲がっている。


わたしはむっとしながら、放送に意識を戻した。


一番目の男の子の、あきらかに自分で立候補したわけではないであろう上擦った声が、土日に数学の宿題ばかり出さないでくれ、とおずおず主張する。


続いては一年生の女の子。


一週間前に告白した男の子に対して、さっさと返事をしろと催促する。


わたしにはけして出来ない真似に、素直に心の中で賞賛を送った。


そして三番目四番目、と続いてゆき、六番目で、わたしの知っているやつが出てきた。


「二年生の新田龍三郎っ叫びま~す」


このアホ丸出しの口調。


間違えようもなく新田だ。


ある意味なんでもありのこの叫び大会。


わたしはかすかな不安に目をぱちぱちした。


新田が出てきた時点で、誰に向かって叫ぶつもりなのか分かってしまった。