すべての女の子と踊った王子は、しかしシンデレラを見つけることが出来ない。


途方に暮れる王子と従者だったけれど、突然王子がぱっと顔を輝かせて言い放った。


「そうか、7人全員を我が妃に迎えればよいのだっ」


少女たちは驚きあきれたが、それぞれの思わくがゆえにうなづいた。


真昼扮する少女は、妃になどなりたくなかったけれど、王族にさからい、下手な目を見るくらいならましだと、他の少女たちにならってうなづいた。


しかし、一人の少女が首を横に振り、悲しげに言った。


「王子さま、わたしは妃にはなれません。ごめんなさい。」


そう言って、王子の声も聞かずに、少女は城を出ていった。


その少女こそ、まごうことなきシンデレラだった。


城の者たちがあきれる中で、王子は呆然と彼女の後ろ姿を見送った。


王子はその生まれのために、自分の言うことを聞かない者に会うことなど、まずなかった。


そして王子は、少女の質素な服に身を包んだ後ろ姿を、12時の鐘と共に走り去ったかの姫のそれに重ねた。