悪魔的に双子。

「……先輩」


「ん?」


椅子の上に体育座りをして顔をうずめていた先輩は、そのままの態勢で声を返した。


「わたし……今日はもう帰りますね。」


「ほえ?何か用事?」


「はい、ちょっと」


「おつかれさまぁ」


音楽室を出るわたしに、先輩はいつも通りのんびりとした口調で言った。


……わたしは特に労力のいることはしていないけと゛、凛太朗先輩の挨拶はいつも、おつかれさま。


「はい、おつかれさまでした。」


わたしも笑って、返事をした。


わたしが廊下に出てしばらくすると、先輩の練習が再開された。


やけに怒りっぽい『エリーゼのために』が廊下中に響き渡っていた。