悪魔的に双子。

「青ちゃん、俺、ぜんぜんうまくならないみたい。」


お互い赤面から約五分後、凛太郎先輩は早くもいつも通り。


子どもっぽく口を尖らせながらも、ピアノに向かうことをやめない。


「うまくなってますよ。初めて先輩のピアノ聴いたときからしたら、もう格段に。」


わたしは慰めるつもりで言ったのに、先輩に軽く睨まれた。


「初めが酷すぎたって、安易に言ってるだろ。」


「そ、んなことないですよ?」


本当にそんなつもりはなかったのだが、ギクッとしてしまう自分もいない訳ではなく、わたしはあははっと誤魔化した。


さして珍しいことでもないが、先輩は泣きそうな顔をして、


「……ラヴェルの『水の戯れ』には、遠いみたい。」


あと100年くらいかかるかも、と半分本気でうなだれた。


「……」


否定してあげられない自分が悲しい。