彼は三年生の、中曽根凛太郎先輩。
放課後、いつも音楽室でピアノを弾いている。
一年の春、バスケ部に入ると言い出した有志と下校の時間の帳尻を合わせるため、わたしは手頃な部活を探して放課後学校をさまよっていた。
美術部と家庭科部の部室があるという二棟の二階に来たとき、ふっと、ピアノの音が聴こえた。
音楽室系の部活はなかったはずだがと首を傾げながらも、わたしは三階へと向かった。
下手くそだけど一生懸命でかわいい音色に、何故か酷く惹きつけられていた。
音楽室のドアを開けると、一人の少年が侵入者の存在にも気づかずに、一心不乱にピアノを弾いていた。
彼が、凛太郎先輩だった。
知り合ってすぐに分かった。
ピアノの音とおんなじで、クルクルと表情の変わる、年上だけどかわいい男の子。
わたしは彼に恋をした。
まごうことなく、わたしの初恋。
わたしは先輩のせいで、鏡が気になって仕方のない女の子になってしまった。
けれど、先輩はそんなこと考えもしないだろう。
いつの間にか、放課後の音楽室に馴染んでしまった、少し変わった後輩、ぐらいにしか思ってないと思う。
人懐っこい先輩は、簡単にわたしの存在を受け入れた。
無邪気に笑って、拗ねて、時に思いつめて。
そんな先輩のことを、わたしはいつだって思っているというのに。
放課後、いつも音楽室でピアノを弾いている。
一年の春、バスケ部に入ると言い出した有志と下校の時間の帳尻を合わせるため、わたしは手頃な部活を探して放課後学校をさまよっていた。
美術部と家庭科部の部室があるという二棟の二階に来たとき、ふっと、ピアノの音が聴こえた。
音楽室系の部活はなかったはずだがと首を傾げながらも、わたしは三階へと向かった。
下手くそだけど一生懸命でかわいい音色に、何故か酷く惹きつけられていた。
音楽室のドアを開けると、一人の少年が侵入者の存在にも気づかずに、一心不乱にピアノを弾いていた。
彼が、凛太郎先輩だった。
知り合ってすぐに分かった。
ピアノの音とおんなじで、クルクルと表情の変わる、年上だけどかわいい男の子。
わたしは彼に恋をした。
まごうことなく、わたしの初恋。
わたしは先輩のせいで、鏡が気になって仕方のない女の子になってしまった。
けれど、先輩はそんなこと考えもしないだろう。
いつの間にか、放課後の音楽室に馴染んでしまった、少し変わった後輩、ぐらいにしか思ってないと思う。
人懐っこい先輩は、簡単にわたしの存在を受け入れた。
無邪気に笑って、拗ねて、時に思いつめて。
そんな先輩のことを、わたしはいつだって思っているというのに。

