ちょっとしたいたずら心が湧き上がって、わたしは彼の隣にそおっと移動した。
彼は曲が転調する寸前でぱたっと弾くのをやめ、ふぅーっとため息をついた。
拗ねたような口調でひとり言をつぶやく。
「やっぱだめだなぁ」
「そんなことないと思いますよ?」
「うわぁっ」
声をかけると、彼は今朝の有志顔負けの仰け反りっぷりで、見事に椅子からひっくりかえった。
「ご、ごめんなさいっ、先輩」
わたしは慌てて手を差し伸べた。
彼はえへへ、と笑って、
「いいんだよ」
と首を振った。
「俺が間抜けなのがいけないんだから。」
「ほんとうにごめんなさい。」
わたしは顔を合わせられないまま、もう一度謝った。
まさかひっくりかえるとは思わなかった。
別にわたしが恥ずかしがることでもないのに、頬に血がのぼる。
「あのぉ、青ちゃん?」
「はい」
立ち上がった彼は困ったようにわたしの名前を呼んだ。
片手で頭をかいて、照れたように言う。
「ごめん……手、離していいかな」
わたしは視線を下げて、自分の両手をまじまじと見た。
もう用はすんだはずなのに、彼の片方の手をきゅっと握っている。
「ご、ごめんなさいっ」
ぱっと離した手を、わたしは自分の頬に添えた。
どうしよ、顔から火がでる。
変な方向に目を反らしている先輩の頬も、少し赤味が増していた。
彼は曲が転調する寸前でぱたっと弾くのをやめ、ふぅーっとため息をついた。
拗ねたような口調でひとり言をつぶやく。
「やっぱだめだなぁ」
「そんなことないと思いますよ?」
「うわぁっ」
声をかけると、彼は今朝の有志顔負けの仰け反りっぷりで、見事に椅子からひっくりかえった。
「ご、ごめんなさいっ、先輩」
わたしは慌てて手を差し伸べた。
彼はえへへ、と笑って、
「いいんだよ」
と首を振った。
「俺が間抜けなのがいけないんだから。」
「ほんとうにごめんなさい。」
わたしは顔を合わせられないまま、もう一度謝った。
まさかひっくりかえるとは思わなかった。
別にわたしが恥ずかしがることでもないのに、頬に血がのぼる。
「あのぉ、青ちゃん?」
「はい」
立ち上がった彼は困ったようにわたしの名前を呼んだ。
片手で頭をかいて、照れたように言う。
「ごめん……手、離していいかな」
わたしは視線を下げて、自分の両手をまじまじと見た。
もう用はすんだはずなのに、彼の片方の手をきゅっと握っている。
「ご、ごめんなさいっ」
ぱっと離した手を、わたしは自分の頬に添えた。
どうしよ、顔から火がでる。
変な方向に目を反らしている先輩の頬も、少し赤味が増していた。

