放課後、わたしは音楽室へと向かった。
うちの学校には吹奏楽部や合唱部なんかの音楽系の部活動がないから、放課後はいつも空いている。
有志は柄にもなく中学からバスケ部に入っているから、一緒に帰るためには適当に暇を潰すしかない。
わたしは音楽室のある二棟の三階に上がると、ちらりと窓ガラスを見て自分の姿をチェックした。
そこにいるのは癖っ毛の黒髪を無造作に束ねている、黒い瞳の地味な女の子。
わたしは唇を噛んで再び歩きだした。
昔は自分の外見になんて全く興味なかったのに。
すぐ近くに自分など比べ物にならない、唯流っていう可愛い生き物がいたから、見かけのことに関しては少し冷めてもいた。
だからあるきっかけで、何かに自分の姿が映るたびに気になって仕方がなくなってしまった自分が少しおかしい。
音楽室に近づくと、ピアノの音が聞こえてきた。
ベートーヴェンの、『エリーゼのために』
そんなに上手でもないが、一生懸命弾いていることがわかる愛らしい音に、自然と口元が緩む自分がいた。
「失礼しまぁす」
邪魔をしないように小さな声で言って、わたしはそろそろと音楽室に入った。
ピアノの弾いている人は夢中でわたしの存在に気づかないらしく、頬を紅潮させて鍵盤に向かっていた。
うちの学校には吹奏楽部や合唱部なんかの音楽系の部活動がないから、放課後はいつも空いている。
有志は柄にもなく中学からバスケ部に入っているから、一緒に帰るためには適当に暇を潰すしかない。
わたしは音楽室のある二棟の三階に上がると、ちらりと窓ガラスを見て自分の姿をチェックした。
そこにいるのは癖っ毛の黒髪を無造作に束ねている、黒い瞳の地味な女の子。
わたしは唇を噛んで再び歩きだした。
昔は自分の外見になんて全く興味なかったのに。
すぐ近くに自分など比べ物にならない、唯流っていう可愛い生き物がいたから、見かけのことに関しては少し冷めてもいた。
だからあるきっかけで、何かに自分の姿が映るたびに気になって仕方がなくなってしまった自分が少しおかしい。
音楽室に近づくと、ピアノの音が聞こえてきた。
ベートーヴェンの、『エリーゼのために』
そんなに上手でもないが、一生懸命弾いていることがわかる愛らしい音に、自然と口元が緩む自分がいた。
「失礼しまぁす」
邪魔をしないように小さな声で言って、わたしはそろそろと音楽室に入った。
ピアノの弾いている人は夢中でわたしの存在に気づかないらしく、頬を紅潮させて鍵盤に向かっていた。

