「いや、そうそうないですよ、青さん。ナメクジですよ?
活発性の欠片も感じられないあいつらが積極的に靴の中飛び込むとか聞いたことないわ。」


わたしも聞いたことないけど、あり得なくはないと思う。


……多分。


わたしはふぅっと息を吐いて蓮に曖昧な笑みを送った。


「ナメクジのことはもう良いよ。ちゃんと外に出してきたし」


蓮はわたしの言葉に変な顔をしてみせた。


「誰かに出してもらったんすか?」


咄嗟に返事が出なくて数秒言葉に詰まった。


「………いや、自分でだしたよ。」


「いや、嘘でしょ。青さんどう考えてもナメクジ入りの上履きなんてさわれないじゃん」


「……さわれるもん」


「……あっ、そう。まぁ、それは後で追求するとして、青さんの上履きにいたずらしやがった奴ですよ……まぁ、園村真昼関連であることは想像にかたくないですけど」


どっちみち後で追求されるのね、とげんなりしながらも、意外に真剣な顔をしている蓮に、軽く感動してしまった。


そして、数秒後に後悔することになる。


「青さんがナメクジ苦手だって知ってる奴…です…よね……」


冷静にそんなこと言っている蓮の顔に、不意に奇妙な笑みが生まれた。


この表情は知っている。


蓮がこういう顔している時は、大抵何か思いついた時なのだ。


そしてこいつの思いつきが、わたしにとっての幸と出たためしがない。


自然と頬が引きつるのを感じた。