恐る恐る、楽屋を覗いた。
〈すご...音、全然ぶれてない。なんであんなに軽い感じに弾けちゃうんだろ...〉
「ん?どーした?何か、用?」
ヤバい...気付かれた!
「あ、い、いえ!ただ、あの...ギターの音、聞こえて、上手だなって。すいません...」
「ハハハ。おもしれーな。すげー焦ってんじゃん?」
「え、だって...」
ギターを弾いていた男性が、あたしに近付いてきて、あたしの頭に手を置いた。
「いーよ。全然。てか...」
その人は、あたしに顔を近付けて、下から上までじーっと見つめた。
「ど、どうし...ました?」
「お前...背、ちっちぇーな。」
はい?
「え?もう、なんなんですか。」
「わりーわりー。」
そう言って、その人は優しく笑っていた。
その顔を見ていると、何故か、すごく安心した。
そして、あたしの心臓は、爆発寸前...。
すごくいい薫りがした。
細くて長い指、
大きな瞳、
低くて優しい声、
そして、何より印象的なのは、
キレイに染まった、ピンク色の髪。
漫画に出てきそうな人だな、なんて思っていると、その人が私に向かって話しかけた。
「ねぇ、名前は?」
「あ、はい、えと..松川...奈緒です。」
「奈緒ね。俺、関塚太志。TAKEってバンドで、ギターやってる。よろしくな?」
「あ、はい!よろしくお願いします。」
話し方が優しくて、すごく落ち着く。
