『あれ、また慎二が先だ』



集合場所に30分前に到着した俺は暫くしてからそんな声をかけられて顔を上げた。

待ちに待った彼女は今日も、


「可愛い格好してるね」

『え。いつもの男装ですが…?』



どんな格好でも可愛いんだよ、君は。

Tシャツにパーカーを羽織っただけの姿だけど、素材が良いから凄く輝いている。




『てか、慎二早すぎ。今日こそは先だと思ったのに』

「アハハ。そこは譲れないよ。さ、行こうか」

『おぅ』


女の子を待たすなんて出来ないよ。
大切な子なら尚更ね。


それに、楽しみで仕方ないから自然と早くになるって、前にも言ったかな?





電車とバスを乗り継いで、徒歩10分くらいで到着した水族館。

カップルや親子連れが入り口へと行く流れに沿って俺達も中へ入る。



『水族館、実は初めてなんだ』

「そうなんだ」


それは…嬉しいな。


『うん。だから楽しみ。なあ、イルカ!イルカ見ようぜ!』

「アハハ、うん、見ようか」



ニコッと、とても可愛いらしく笑った朔月君はイソイソと前に歩いていく。

貰ったパンフレットに急いで目を通した俺は彼女を誘導するために、小走りで追いかけた。