コンビニに到着し、バイクを降りる。

緊張していたのか少し堅くなった足のせいで少しフラついた。


「…っと、大丈夫か?」

『ん、ありがと』


素早く出された腕に支えられ、何とか踏みとどまる。


それにしても…


『バイクって気持ちいいな!』


初めて乗って分かる。風を斬るあの感じ。

翔の運転は安定感があって、スピードもある、かなり上手いんだって事が素人のオレにも分かる。



「…また、乗せてやる」

『アハハ、ありがとう。楽しみにしてる』



弱くなった雨は、既に止んでいた。

雲の間から少しの星が覗く。


『…でも、翔に運転させるの悪いからな〜』

「……二人で、何処か行こ」

『……え?』

「…乗って欲しいんだ、俺が」



オレからヘルメットを受け取る翔は顔を赤くして俯いた。

赤いメッシュが映えてんなーって頭を見て思うオレは今KYだな。



『うん、行こう!ドライブだな』

「…ん///」


ニッコリ笑って了解するとチラリとオレを見てから小さく頷いた。


そんな可愛い翔は目を左右に動かし十分に照れた後、


「またな、朔月」


と、笑顔をオレに向けた。


少し赤い頬が手伝い、果てしなく溢れるフェロモン。

いや、色気って言った方が良いかな。




『またな!』


手を振ると、片手を上げた翔はヘルメットを被り、バイクを走らせた。





無口で無表情だった狼さんだけど、

照れ屋で優しい、愛すべき無口君なんだ、翔は!





少し覗く星よりも、翔の笑顔が輝いて見えた…なんつって!








〜 愛すべき無口 end〜