黒いデカイバイクに跨がる黒ずくめの男。

一瞬ゾッとする風貌にオレは身構えた。



ゆっくりと近づいたバイクはオレの目の前でピタリと止まり、男はゆっくりとヘルメットを取った。



「……何してる?」




……なんだ、翔か。


黒いズボンに黒いパーカー、中はシロTシャツだが、まあ黒い黒い。

オマケに黒バイク、黒ヘルメット。


君、どんだけ黒が好きなのさ。




『あ〜…ちょっと野暮用で。ホラ、今日晴れの予報だったろ?』

「……知らん。予報は見ない。……傘、ないのか?」



少し濡れた髪をかきあげながら、オレを見る。

服があんまり濡れてない様子を見ると、翔は出たばっかりだ。




『ない。今、ホテルに借りに行こうかなって』

「……乗るか?」



チラリとホテルに視線を向けてから、バイクの後ろを指差した。


『…バイク乗った事ないよ』

「大丈夫。支えるから。…送る」



ポッケから出したハンカチで後部座席を拭く翔。

優しいな、と笑ってしまう。



「どうした?」

『いや、何でも。ありがとね、翔』

「…あぁ」



目を細めるだけの微笑。けど、翔にしては珍しい。


スッゲー綺麗な顔してんだから。



『おじゃましまーす、っと』



よっ、とデカイバイクを跨ぐ。

バランスを崩しそうになるも、無言で翔は支えてくれた。


揺れるバイクに落ち着かず、なんかソワソワする。