ザァァァァァ―…………………



デカイ雨粒が降り注ぐなか、立ちすくんでいた。


あー……傘がない。

〜side朔月〜




会議のためにきた某ホテル。

先程までいたおじ様達が車で帰るのを見送り、フと気付いた。



傘がない。



車?

車なんて運転できないし。

オレ未成年。


あ、執事?


熱出して休んでる。




家に電話すれば良いものの、余り頼りたくないお年頃。

……正直言うと、今回の会議が微妙だったが故の強がりですが。



けど、お天気おねーさんは晴れと言ったのにな。

予言者じゃねーから、外すのは仕方ないけど言わせて。

おねーさんの嘘つき。




そっと手を前に出すとビショビショ濡れる手。

大粒の雨粒は結構痛い。



『………』


一瞬濡れて帰りたいと思ってしまう。

たまには羽目外したい。



いや、止めとこう。

なんかヌルヌルするしな、雨。



ホテルを振り返り、傘を借りようか、と思った時。




ブロロロ―……



雨の音の中に混じる、エンジン音。

静かなエンジン音と、タイヤが水を弾く音。



バイク?



見ると、デカイバイクが近づいてきた。