哲「ハッ!朔月ぃー!!助けてぇー!!!」



オレに気付いた哲が叫んだ。それに尚輝が反応する。


尚「お!さっくん暇なら俺と滑らないー?」

『遠慮します』

哲「なっ!助けてよ朔月!」

尚「さっくんが俺と滑るなら、哲解放してあげるー♪一緒に滑ろー?さっくん!」

『お断りします』

哲「ひっ、ひでえ!!!!!」



や、ごめん。尚輝と一緒にクルクルするのだけは勘弁。

冷や汗をかきながらオレは哲達から離れた。後ろにいた翔は仕方ない、と言う感じで光樹の所へ。





『………わぁ。小鹿みたい』




そんで、オレが向かった隅の方には小鹿のようにプルプル震えた、慎二が。



慎「……な、情けない事に、全く立てない。どうやってるの?」

『ブフッ!』

慎「……」

『わ、わり。怒るなよ……ブハッ』

慎「…朔月君はこれからは無理矢理パンを食べさせよう」

『!?…止めてください。ごめんなさい』





慎二が恐ろしい事言い出したんで、からかうのはこれだけ。

壁に捕まる慎二の手をそっと引っ張った。




慎「わっ!」

『尚輝があんなにすぐ馴れたんだ。慎二もすぐ滑れるさ!さー、オレと練習しよーぜ?』

慎「う、うん。あ、あんまり早くしないでね…?」

『はいはい。いっくよー』



スイーッと滑り慎二を真ん中へと引っ張る。

必死にオレに捕まっていた慎二も、次第にプルプルしなくなった足でしっかりと氷を蹴って滑れるまでに。



『大分、上達したな!』

慎「朔月君のおかげ。ありがと」

『アハハ!じゃ、手、離して大丈夫かな』

慎「…………ダメ」

『え?でももうオレ慎二引っ張ってないけど?』

慎「…、手を、離したくないんだ」