『…その美人に、お前、少し興味持った?』


朔月の問いに少しドキリとする。

朔月が一番大切で、大事なのは変わらないが…


「……少しだけ」


興味っつっても、恋とかそんなんじゃあない。

ただ、あんな美人がオッサンに追われていたのが不思議だっただけだ。


それに、少しは少しでも、微塵に近い少しだ。


『……クッ…ちょっと待ってろ』


フキンで口を拭った朔月が席を立つと棚を漁り出した。
何を出すんだよ。


『…ほーら、コレ』


朔月が拡げたファイルに目を向けると…


「…晶!?」


綺麗な顔で笑っている晶の写真が。

何で朔月が晶の写真を…?


『そう。コレ…晶君』

「…“君”?」


ニタニタ笑う朔月はファイルを閉じると表紙をオレに見せる。


『これ、オレに来た見合い相手一覧』

「!!」



葉月が帰ってきてから、女の存在がハッキリした黒崎財閥に見合いが寄せられるのは当然で。

そのファイルを嫌そうにしながらも真面目にチェックしていた朔月。


『美人だよなー晶君。ブフッ!』

「…………」



おい、笑うな。


お、俺は…



「朔月が一番好きだから!!!」

『ブハッ!好きになりかけたのかよ!?』

「ちょっと興味持っただけだ!!」

『アハハハハハ!お前にこの見合いは譲るわ!』

「いらねーーーっ!!!!」



俺の悲痛の叫びは朔月の笑い声に消えて行った。


……チクショウ。

だから休みなんかいらねーんだよ!





〜vacation end〜