するとその初めての時、ヤツは呆れた顔(でも無表情)で言ったと思う。
「・・・・何してんの?」
って。で、当然私は「膝枕に決まってるでしょ。何してるように見えるのよ」と返した。
しばらく黙って私を見下ろし何か考えていたようだったけど、口にするのも面倒臭かったらしくてそのまま何も言わずに読書に戻ったのだ。
きっと何か言ったところで私はそれをするんだろうと諦めたのだろう。素晴らしい。人間、諦めも必要だよね。
だから、私はそれ以来、ヤツの膝枕で寛ぎテレビを観たり、ビデオを観たり、たまーに彼の本を借りて読んだりしている。
ヤツの膝は温かい。そして、ふんわりとヤツの匂いがする。私はそこで思う存分寛いで、相手が聞いてようが聞いてなかろうが、今日あったことなどをベラベラと寝そべったままで喋ったりするのだ。
それが私達の夜の過ごし方だった。
何かやらなきゃならないことがない限りは、いつでもこうしてお風呂までをまったりと過ごす。
ヤツは実のところこの膝枕を迷惑に感じていたらしく、これを枕にしろって、巨大なぬいぐるみをプレゼントしてくれたのだ。
あれは、去年のクリスマス。
まさかプレゼントなんてもらえると思ってなかった私は、大いに驚いた。だって、漆原大地だよ!?クリスマスプレゼント!?って。
で、慌ててびりびりとその巨大なラッピングの紙を解いて―――――――静止してしまったのだった。
だってそこには、カメがいた。



