畜生!
ガタンと音を立てて立ち上がり、窓を閉めた。・・・また使われてしまった。でもでも、勿体無くて、窓開けっ放しなんて許せないんだもん。
「涼しくなっただろ?」
飄々とそんなことを言う男の頭を新聞で殴るべきか、一瞬真剣に考えた。でもそんなことをしても全く動じないだろうなあ~・・・。
きっとスルーしそうだし、そうなると私は余計にムカつくはずだ。
そう考えるとやる気も萎えて、私はすごすごと自席に戻る。
確かに涼しくなったお陰で私の食欲は復活し、それからまもなく晩ご飯は終了となった。
ヤツは食事の後はいつも通りに定位置に直行する。
ダイニングの端っこ、テレビが見れる壁際に、ヤツはお気に入りの座椅子を置いている。そこに座って本棚から本日の一冊を取り出して黙々と読むのだ。それが、彼の夜の過ごし方。
ちなみに私は台所の片付けを済ませ、お風呂の支度をし、それからコーヒーを入れて座椅子の彼の元へと向かう。そしてローテーブルに自分のマグカップを置くと、おもむろにヤツの膝に頭を乗っけて寝転ぶのだ。
これが、至福の時。
テレビを観ないヤツがテレビを観るのに一番いい場所に座っていて、私はそれを苦々しく思っていた去年の秋、そうだ!この膝を枕にしてやればいいのだ!と気付いたのだ。
私ったら賢い!
自分ではそう思って、相手の意思は確かめずに、ぐいぐいと自分の頭を膝の上に突っ込んだってわけ。



