・・・・あああ、そうだ・・・この人、いたんだった。私はがっくりと肩を落とす。これでまた、関係ない人に知られてしまう・・・。

 勿論佐々波さんは嬉しそうな反応をした。顔に喜色を浮かべて、我が山の上学園の名物とも言える女性に向かってベラベラと喋った。

「そうなのよ!この兼田さん、昔会社の上司と不倫をして、その人の家庭を壊してるのよ!酷いと思わない?なのに自分はちゃっかり結婚して――――――」

 くっそう、ムカついた!

 怒りが理性を凌駕して、次の瞬間、廊下にパーンという音が響き渡る。

 私の片手が、佐々波さんの左頬にクリーンヒットしていた。

 あ、しまった。と思った。だけどももうやっちゃった後だし、実際のところ、いい迷惑なのだ。もういいや、気にしない。

 そう、コンマ3秒くらいで考えて、私はひっぱたかれて真横を向いた佐々波さんを見下ろす。

「いい加減にして頂戴。私の過去があなたに直接関係ないなら、あなたがしているのは私に対する名誉毀損よ」

 叩かれた、とやっと判ったらしい。みるみる腫れてくる頬を押さえて、彼女が叫んだ。

「何するのよ!」

 更に言い募ろうと私が口を開いたとき、またもや乱入したのは渡瀬さんのまったりとした声。

「ほら、そこで這い蹲らなきゃ、あなた」