食事中に、暑い~って、4回は言った。
額にはずっと汗が張り付いたまま。代謝の悪い私が汗をかくなんて滅多にないけど、それくらいには暑い夜だった。
どうしてなのよ、まだ6月なのに!
これだけイライラするのは生理前もあるけど、暑いからに違いない。
窓も開けて扇風機を強で回しているけど、そんなんじゃ追いつかない。舌打をしそうな勢いで風の入ってこない窓を睨みつけていると、前の席で顔を上げて、いつもの淡々とした調子で彼が言ったのだ。
「エアコン、つけたら?」
いつもの無表情で涼しそうな顔してるけど、やっぱりヤツも暑かったんだな。・・・いや、ただ単に私が煩いだけかも。有り得る。
私はお箸を置いていやいや、と首を振る。
「まだ6月だから、扇風機で乗り切りたいのよ。電気料金値上げするし」
ヤツの顔は無表情。でもきっとこう考えているのだろう。値上げ?それが何だ?って。ついでに、6月?だから何だ?とも思っているはず。
親切な私はヤツが口を開く前に答えを見せてあげることにした。
「やっぱりホラ、節約できるところはしなきゃでしょ?電気代払えるからといって、ガンガンつかっていいわけではないというか」
ね?と覗き込んだら、真っ直ぐにこちらを見ていた目をふいと下に向けてまた食事を再開している。
・・・逸らしやがった。



