そんなこと聞いてる場合じゃないでしょ!と自分に突っ込んだけど、言葉が勝手に出ていた。

 もうなんていうか、この人の出すまったりとした雰囲気にのまれてしまったとしか言いようがない。

 何なのだ、この強烈な存在感は。

 きっと佐々波さんもそうだったはずだ。だって罵声も止んでいたもの。

 渡瀬さんはふああ~と大きな(でも可愛らしく)欠伸をしてから、ゆっくりと立ち上がった。

「私、女性の団体に囲まれると頭痛がしてくるので休憩を。・・・あなた、風邪引いちゃうわね。着替えないと」

 小首を傾げて私を見る。・・・うーん。本当、小さくて柔らかそうな人だな。

「わ、渡瀬さん・・・」

 後ろで佐々波さんが呟く。どこまで聞こえていたのだろうかと動揺でもしたのだろうか。

 遅ればせながら、私はムカッ腹が立った。

 くるりと振り返って佐々波さんを睨みつける。

「あなたは、久しぶりに会った顔見知り程度の私に暴言を吐いて、水を掛けるなんて暴力まで働いたのよ。この落とし前はちゃんとつけて貰うわ」

 佐々波さんも私を睨みつける。

「煩いわね不倫女!ざまあみろだわ!」

「・・・とりあえず、クリーニング代やら何やらは払ってもら―――――」

「不倫女?」

 渡瀬さんがまったりとした声を挟む。