ぐらりと来出した私を支えたのは、後ろから聞こえた声だった。

「煩いわねバカ女。あんた、当事者でもないくせに、何偉そうに都を責めてるのよ。昔から思ってたけど、頭悪いんでしょうね」

 後ろを振り返ったら、そこには怒れる女が立っていた。

「奈緒!」

 こんな場面なのに私は思わず笑ってしまう。その腰に両手を当てて威嚇する姿は、小学生の頃から変わってなかった。

 戻りが遅い私を探しに来たようで、佐々波さんの言葉もしっかり聞こえたらしい。

 彼女の登場で少し勢いを削がれた佐々波さんが、一つ深呼吸をする。

「榊さんにも関係ないわよね」

 更に低い声になって言った。彼女の機嫌も悪化したらしい。・・・ま、そりゃそうよね。

「もしかして、榊さんも知ってるの?それで止めなかったの?ご立派なお友達ね。それとも同じ穴の狢なのかしら」

 つんと顎を上げて挑発する佐々波さんを奈緒は嘲笑を浮かべて見た。

「バカらしい。私は人が唾つけたものに興味などないわ。結婚した男で魅力的なヤツなんていないのよ」

 ・・・おお、断言した!ってか、物凄く耳に痛いんですけど、奈緒ちゃん。

 佐々波さんが悔しそうな顔になって黙った。

 私はしばらく二人の顔を交互に観察する。ま、ここはバー近くで煩い場所とは言え他の人もいることだし・・・とりあえず、とめるべきよね?