え?と顔を上げる。他の人たちもいきなり会話が分断されて戸惑ってるみたいだった。
「あ、うん。うちはまだよ」
私は答える。悪気はない・・・に、違いない。
彼女の隣の岸田さんが、佐々波さんの腕をつついた。
「悠子ったら、いきなり何よ。幼稚園の話してるのに、急に会話切らないでよ。空気読んで~」
ケラケラと皆で笑う。すかさずフォローが入ることが、皆が大人になった証拠だなあ、と思ってしまった。高校生の頃は、こんな風にうまくは行かなかったよね。きっと気まずくなっていたはず。
「ちなみに、私も子供はいないわ。だから退屈なのよ、あなたたちの話は~」
大げさに欠伸をしてみせて忍田さんがふざける。それに皆がごめーん!と返して雰囲気が完全に元に戻った。
さすが忍田さん。素晴らしい配慮。
私はにっこりと笑い、お盆を手にした。
「ごめんね、あっちで奈緒が待ってるから。皆変わってなくて驚いたわ~。また、後で」
「あ、そうなんだ。榊さんにも宜しく~」
「後でゲームやるってよ。3-1は絶対勝つんだから兼田さんも張り切って参加してよ~!」
「じゃあ後でねー!」
皆がヒラヒラと手を振ってくれる中、私はお盆を持ってそこを離れた。歩きながらふう、とため息をついて、そこで栓抜きがないのに気がついた。



