漆原大地と結婚した、でも仮面夫婦なの、と彼女に言った去年の夏、その成り行きに驚愕して、それから本物の夫婦になるためにヤツを襲え、と私に指示したのはこの女。
結果的にはそうなったから、ちゃんと本物になれたよと報告した時の奈緒の鼻息の荒さったらなかったのだ。
で、あいつ童貞だった?などと聞いたのだから。
童貞だとは思えない指遣いや反応だったし違うはず、とは恥かしくて言えなかった私だ。
まあ、ともかく。奈緒がヤツの参加を聞いて驚くのはよく判る。だから友達から電話が来たらしい、と言ってみた。
『へーえ、あいつに友達がいたのか!』
「・・・いや、正しくは友達ではないみたいだけども・・・」
『え?』
「私にも判らない。ま、それはいいのよ。とにかく奈緒は行かないのね?」
じゃあ私もやめとこう~、そう思って確認すると、ちょっと待って、と聞こえた。
『やっぱり参加するわ。幹事に連絡するなら私も参加っていっておいて』
「・・・出るの?」
電話の向こうで奈緒がむふふふ~と気持ち悪く笑った。
『だって漆原が行くんでしょ?ヤツにも久しぶりに会いたいし、都のことで釘さしとかなきゃだし、それにヤツに電話したのが誰か気になるからさ』
・・・・ミーハーだ。若干呆れた。だけど私は、了解と返事してそそくさと電話を切る。



