・・・一刀両断だな、奈緒。私はまあまあと彼女を宥める。
まあ、いわんとしていることはよく判る。私だって去年までの、フリーターでニートでアラサーの独身だったなら、同窓会なんてごめんだと思ってたはずだ。
人様に自慢出来るキャリアもなく、結婚もしておらず、子供もいないとなれば、それらを持っている人たちの輪の中に入るのは地獄の針山に登るにも等しい。
よっぽどのマゾ体質でない限り、そんな経験はごめんだよね。
「でも、奈緒にはゴージャスなキャリアがあるじゃない」
一応言ってみる。
友人である奈緒は、それこそ独身を謳歌しまくっているキャリア組みで、つい最近日本に帰国したけどそれまではロンドンっ子だったのだ。通訳の仕事をしていて、この前ちらりと聞いたところによると5ヶ国語を操れるらしい。
私とは違って、子育てや生活に疲れた専業主婦を羨ましがらせる経歴を持っている。各方面で活躍している同級生とも話は弾むに違いないのに。
『そんなものが何になるのよ。もしかして、都は参加するの?』
まさかでしょ?と言うニュアンスを受け取った。
私は何故かいいわけしたい気分になり、夫を引っ張り出す。
「いや、彼が行くって言うから・・・」
『は!?』
「は?って、何よ」
『漆原が同窓会に出席?まさかでしょ。あいつそんな社交的なタイプだったっけ?』
奈緒は、小学校から高校の間に、ヤツと何度か同じクラスになっているらしく、学生の時の夫を知っている。



