ヤツの誕生日は10月10日、旧体育の日だ。
今年は木曜日で、ヤツは帰宅が早い日に当たっている。
何に興味があるのかが全然判らない男への誕生日プレゼントを選ぶにあたって、かなりシンプルにすることにした。
去年は確か、「何が欲しいの」と本人に聞きまくっては、「何もない」と言われ、結局は何もあげれなかった私なのだ。
でも、今年は違う。
今年こそは、ちゃんとプレゼントをあげたいのだ。
だって、彼からは貰ってばかりだ。
指輪も、玉姫も、いちごも、そしてマイホームまで。
だから私も―――――――――――――
「誕生日、おめでとう」
ヤツが帰るまでに準備したのは、豪勢な夕食のテーブルと、黄色い花の鉢植だった。
男の人にあげるプレゼントとしては、鉢植は珍しいだろう。それも食べられるものではなく、観賞用の花が咲いている鉢植は。
「・・・」
ヤツはすこしばかり目を見開いて、私が差し出した鉢植を見ていた。



