「土地、私の実家の近くに買ってくれたんだね」
「うん」
「ありがとう、多分、かなり助かる結果になると思う」
子供が生まれたら、慣れない育児に実家の手を借りまくるだろうし、と思って。きっとヤツもそう考えたんだ。見せてもらった登記簿の書類に書かれた住所は、私の実家に近い場所だった。
徒歩5分ほどの。あれだよね、スープの冷めない距離ってやつ。
ヤツは本を読みつつ頷いた。
「うん」
私は玉姫を胸に抱きかかえて頬をこすりつける。
「来年の3月までで、家、出来るかなあ?」
そんな短期間に建築できるものなのだろうか。だって、建築会社選びから入るわけでしょ?うーん、と考え出したら、上から声がした。
「安定期に入ってから動いて、全部決めるのが1月までなら、出産してしばらく実家に戻る間に完成する」
・・・・ほほう、そうなのか。ふーん、でもそうなんだろうな。きっとそれも考えた上で、土地から買ったのだろう。建売ではなく、私の意見を入れられるように。
黙って出来ることはそれまで。後はさすがに、全部一人では決められないと。
私はにっこりと笑って、オッケーと軽やかに言った。
「いいわよ、あとの面倒臭い事は全部引き受けてあげるわ」
下から見上げるヤツの口元が微笑を作るのを、嬉しい気持ちで見ていた。



