私はご飯も途中で、その後姿をボーっと見ていた。
・・・・家、か。
そして、庭。
口元が綻ぶのが判った。
くふふふふ・・・・笑いが漏れそうになって、慌てて下を向く。
そっか、あの230万・・・それに、数回の日曜日の不在は、きっとこれだったのだ。230万は頭金か、手続き代というところか。
マイホームだ!って興奮した先ほどの感覚が、私に戻ってきつつあった。
申し訳ないと残したご飯に頭を下げて、それを片付ける。
そして私もいつもの定位置に行って――――――――つまり、ヤツの膝の上に頭をのっけて寝転び、カメの玉姫を引き寄せて抱きしめた。
本を読むヤツを下から見上げる。
「ねえ」
「―――――――ん?」
文字を追っていた目が、私を見下ろした。
「土地は判った。で、肝心の家はどうするの?」
目はもう既に本に戻りながら、ヤツが言う。
「好きにして。文句は言わない」
やっぱりね。私は予想通りだと一人で頷く。箪笥と一緒なのだ。やつの中では、家も、箪笥も同じレベル。
去年この家に引っ越してきた後、ヤツは部屋作りを私に任せた。その時と同じ言い方だったのだ。『文句は言わない』。



