私はまだ大家さんには言ってないけれど、そうだよね、来年の3月までにはどっちにしろ2階のこの部屋からは出なくてはならないのか!

 ―――――――――で。

 何度も言うように、究極の面倒臭がりの我が夫、漆原大地氏は、勿論引越しや、その準備片付けなどを嫌がる傾向にある。

 でも妻が妊娠した。ここを出なくてはならない未来が決まってしまった。ならば――――――――家を買って、引越しを済ませよう。

「・・・そう思ったわけね?」

 私が椅子に座りなおして一通り喋ると、それを黙って聞いていたヤツは簡単に頷いた。

「そう」

 ・・・・・若干、感動が薄れるよね~・・・・。椅子の背にぐったりと凭れた私はそう思って苦笑する。

 ここは純粋に、私を喜ばせたくてやったのだと思いたいところだ!だけど、残念なことに、私はヤツの性格が判ってしまっているんだな~。

 引越しなんて面倒臭いことも、賃貸である限りはやっぱり続いていく。

 ならば、もう買うか。で、引越しなんてもの、金輪際で終わりにするか。そう思ったんだろうな。

「・・・もの凄く、君らしいけどさ」

 呟いた言葉がヤツに聞こえたかは知らない。

 ヤツは、いつもの通りに手を合わせてご馳走様、と言った。

 そして毎日と同じ手順で食器を片付けて、いつものように本を読みに座椅子の方へと歩いていく。