「――――――――それは、お楽しみよ。荷物、着いたら絶対電話してよね」

「・・・何で?」

 怪訝な顔をする私ににやりと気持ち悪い笑顔を見せて、彼女は言う。

「漆原の反応が知りたいから。じゃあね!」

 意味深な言葉を残したままで、風のように彼女は去って行った。

 私はふわふわと体が浮いたような状態で、そのまま座席で見送ったのだった。


 ・・・渡瀬さん、一体何をくれるって言うんだろう。

 いやいやいや、それよりも、それよりも!!

 私は他の人に見られないように、テーブルの下でぐっと拳を握った。


 よっしゃああああああああ~っ!!!ブラボー、コウノトリ!ありがとよー!!

 頭の中では盛大なパレードの始まりだ。

 ついに、ついにこの日が、私に来たのだ!

 うぇーるかーむ、べいびー!!

 つい大声でげらげら笑いそうになって、必死で自分を止めた。

 あぶなーい・・・ヤバイ女になるとこだった。

 私も鞄を手にとって、店を出る。

 鼻歌が出そうな勢いで部屋まで帰った。

 まだヤツは帰ってなかったけど、夏の夕日が差し込んでオレンジ色の光で溢れたリビングを見て、不覚にも、涙を零してしまった私だった。

 ゆっくりと、まだ何の変化もないお腹を撫でた。