カメだ。

 あの、浦島太郎さんをのっけて竜宮城に連れて行くあの生物。甲羅がついた、あれね、あれ。

 ・・・・カメの巨大なぬいぐるみ(しかも目を瞑って寝ているらしいのよ、この子)。まさか33歳にもなって、夫からのプレゼントでそんなものを貰うなんて誰が予想しただろうか!私達を無理やり結びつけた縁結びの神様だって予想しなかったはずだ。言い切れる。

 これを君は、私に一体どうしろと?と目を点にしていた私に彼が言ったのだ。

 膝枕、本読むのに邪魔だから、これ。って。

 ・・・はあ、なるほど。これを枕にしろってことなのね、と理解した。

 駄菓子菓子!

 私がそんなことであの居心地を逃すわけがない。大体あの場所は、この家で一番テレビが観れるポジションなのだ。夜はテレビと決めている私がその場所を退く理由がないではないの!

 どうしても嫌なら、君が座椅子を違う場所へ引越しさせなさい。

 にっこりと笑って、私は玉姫と名づけたそのカメのぬいぐるみを抱き枕にして、相変わらず彼の膝枕で寛いでいる。

 一応ヤツは、嫌そうな顔をしてこう聞いた。使わないのか?って。使ってるでしょ、抱き枕にして、と答えて差し上げた。

 それ以来、ヤツは本当に諦めたらしかった。

 ぐふふふふ、やった。