携帯を切った途端、

光輝が目の前にいる事に気が付いた。

オレはさっきの事を、

ササッと説明する。

光輝はちょっと嫌そうな顔をした。

・・・

そう。

光輝は、お葬式、お通夜と言う類は、

あまり得意じゃない事は、

十分承知してる。

だが、K社は光輝の顔をよく知ってる人が多いから、

光司が行くより、光輝を行かせた方が

懸命だ。


「悪いな、光輝」

「社長のお言葉には、

秘書は背けませんから・・・

では行ってまいります」


「…ああ、頼む」

踵を返した光輝が、

玄関を通り過ぎたのと

ほぼ同時に、亜紀が飛び込んできた。

・・・

どこから走ってきたのか、

額には汗がにじんでいた。