屋上のさびついた汚いドアノブをあけると
誰もいない、静かな屋上についた。
二人とも、だまったままだった。
カラスが鳴いた。
まるで、今から悲劇が起こることを
予知するかのように。
「あのさ・・・、」
一樹は微笑みながらそういった。
今から、なにを謝るのだろう。
私はずっと考えていた。
一樹はなにもいわなかった。
一樹の表情に笑顔はもうなにもなかった。
笑顔というより、
つくったような笑顔は。
杏奈も涙を浮かべていなかった。
ただ、杏奈も今から何を話すのだろう。
何を謝られるのだろう。
そう、考えていたようだった。

