部屋を見回していると、由紀がオレの前にお菓子とティーカップを置いた。
「・・・・・ありがとう」
「いえいえ」
由紀が、懐かしい笑顔を見せる。
笑顔も、変わらない。
「孝之、今日シゴトは??」
由紀は務めて普通だった。
そわそわし続けるオレなどお構いなしに、何気ない話を切り出す。
「先週休日出勤したから、今日は代休。 由紀は??」
「・・・・・辞めちゃった。 ちょっと・・・・キツくなってきたから」
由紀が気まずそうにお茶を啜った。
「・・・・・小百合が心配してた。 ・・・・なんで・・・・手術受けないの?? 助かる可能性だって低くないんだろ??」
「・・・・・ワタシにはさ、孝之や小百合みたいに養わなければいけない家族もいないしさ・・・・これから結婚出来る気もしないしさ・・・・歳を重ねる事に意味を感じない」
オレには何も言えない。
由紀を捨てたオレには、何も言えない。
由紀は、ワザとオレが何も言えなくなるような答えを言ったのだろうか。



