「何で起こしてくれないんだうちの親は」なんて言ってみたが、考えてみればそれは仕方のないことだった。
両親は帰りも遅ければ出勤するのも早い。
それに俺が遅刻するとは思わなかったんだろう。


一度玄関で背を伸ばした後、ドアを開けた――今日は快晴だ。
雲一つない青空、昨日のことなんて忘れさせてくれるくらいに清々しい。

(たまには良いのかもな、遅刻も)
そう思いながら走っていたら月野駅に着くのはすぐだった。
だがそこに広がる光景はいつもの駅前ではなかった。
いつもより遥かに人が多く、ざわめきが耐えない月野駅。
普段は十人くらいしかいないのに、今日はざっと見て四十人以上はいるだろうか。


「な……なんだよこの人だかり……」


電光掲示板に流れる文章を見ると、どうやら車両故障で運転を見合わせているとのこと。