俺が死ぬことを恐れたのはこの世界にまだ未練があるからだったんだろう。

汐見を見て分かった、本当に汐見は死ぬことを恐れていない。


死ぬことも幸せへの一歩。
そんな有り得ない言葉が今の汐見には似合っていた。


「分かった……もう俺はお前を止めない。だからもし曽野宮に会えたら伝えておいてくれないか?」


「うん、何を伝えればいいのかな?」

「貸した小説は俺が勝手に引き取っておくぜ。そう伝えておいてくれ」


俺と汐見は互いに笑った、まるで昔からの友人のように。