「汐見やめろ!お前が死ぬことで……そんなことであいつが喜ぶとでも思ってんのかあああっ!」


がむしゃらに動いても縄はほどけない、汐見は拳銃を自分に当てたまま身動きをとろうとしない。


「私は死なないよ。私はね……会いにいくんだよ、大好きな曽野宮君に」


「……あ、会いに?」


それは俺が初めて汐見の笑顔を見た瞬間だった。

その笑顔は作ったモノではなく、心からの笑顔だというこが分かる。

大好きな人に会いたい。
その思いを俺はしっかりと受け止めた。


「会いにいく……か。嬉しそうだな汐見、でもそれで後悔はないのか……?」


「うん、無いよ。私は曽野宮君を探す為だけにこの数日間を生きてきた。そしてやっと曽野宮君のいる場所が分かった……だからやっと会えるの。嬉しくなるよね!」


曽野宮のいる場所、それはこの世界じゃない。
汐見はもう死ぬ覚悟ができているということになる。
俺はそれを止められない。いや、もう止めない。


汐見の笑顔は、曽野宮がいる場所が分かったからやっと見えたんだから。