月野駅周辺はコンビニや小さなスーパーマーケットしか見当たらない。
娯楽的な施設はないが、そのぶん生活用品に困ることはない。
歩き慣れた道、俺は複雑な感情を抱えたまま自宅へとたどり着く。
住宅街の中にある典型的な一軒家だ。


玄関に鍵を差し込みドアノブを回す。
そこには、いつも通りの真っ暗な景色が広がっている。


「ただいま……って誰もいないか」


両親は共働き、この時間に仕事から帰ってくることは滅多にない。
大体夜9時頃に帰ってくる時が多い、兄弟もいない一人っ子の俺はそれまで一人だということだ。