(くそっ!ここで急所をつきたかったのに!)

俺は汗ばんだ両手に拳を作り、強く握った。

「ごめんね真琴君。ちょっと私と汐見さんはこれから別の場所に行かなきゃならなくなってしまったんだ」

「……そうですか」


別の場所……世間では死んだことになっている汐見を連れていったいどこに行こうというのか。

そんなことを考えている内に勝俣はカバンから財布を取り出していた。