根拠や証拠がない限りそういう類いの話は俺は信じない。
それでも聞くのは何となく気になるだけだから――好奇心ってやつだ。


隣で雑誌をパラパラとめくっていく汐見。
ちゃんとページは見ているようには見えない。
目は泳いでいるしたまに俺をチラチラと横目に見てくる……44チャンネルの話を鵜呑みにしているんだろう。
そんな汐見の隣で俺も本棚から適当に本を手にとった。


「これでいいかな」


男性ファッション誌はそんなに見る機会がないから新鮮だった。
それから数分、お互い無言のまま雑誌をめくっている。
たまにチラチラ見てくる汐見と目が合うと何だか気まずくなる。


(……なんなんだよ)
この重い空気に耐え切れなくなった俺は杉森を探すように周囲を見渡す。