「なんとか間に合ったな!」 「うん。ちょっと疲れたけど」 電車の中の座席に腰を降ろし、座り呼吸を整える。 正午前、この時間帯はさすがに座席もちらほら空いている。 そして再び沈黙が訪れた。 この二度目の沈黙が二人の死という現実を更に強調させる。 当たり前だと思っていたことほど、それを失った時の辛さが重く苦しい。 汐見も俺も、考えていることは一緒なんだろう。 いつもならここに杉森がいるのに……と。