ひまわりの涙

人混みをの合間を器用に抜けていく。司に手を引かれていなければ確実にはぐれているだろう。


時折司に声を掛ける人も居るがうまく交わして逃れる。


何だか変に注目集めてる?


司さんと一緒だからかなぁ…


恥ずかしさで俯きながら連れて行かれるまま身を任せた。


どこをどう歩いたのか分からなかったが、着いた先はホテルの裏手にあたる場所。


そこには都会の喧噪など無関係のような自然が広がっていた。


大木が一本存在感を放っており、その隣には温室があった。


「ここだよ。入ってみて」


司は扉を開け中へ入るよう促す。


私は促されるまま足を踏み入れた。


その先には…


一面桜草で埋め尽くされ、おとぎの国のような世界。


空中には色も形も違うバルーンか浮いていて…



「とっても…綺麗…」


目を奪われ引き寄せられるように花たちの間をぬって歩いていた。


すべてを忘れ知らず知らずのうちに笑みが漏れる。


司は久しぶりに昔のような鞠乃の笑顔を見れたことに嬉しさがこみ上げてきていた。


あの笑顔を守れるならなんでもやろうと思える。


「司さん!見てお花たちの間にバルーンアート。ウサギにクマ!あっ!!あっちにはディズニーキャラクター!」


鞠乃は子供みたいにはしゃいでいた。