肩をつかまれた驚きより自分の名前を呼ばれたことの方に驚きを隠せなかった。

なんとなく分かったから…

あの人達と関係ある人だって…

ユックリ後ろを振り向く。

そこには黒のスーツ姿の一般的に格好いいと言われる部類の男性が立っていた。

表情はにこやかでも隙のない振る舞い。

考えの読めない表情。

自分の顔がひきつっていくのが分かる。

「やっぱり神城 鞠乃さんだ。髪型も服装も全然違うから迷ったんだけど、お兄さまに似てるからそうかな?と思ってしばらく後付けさせてもらってたんだ、ごめんね」

そういって人懐っこい笑顔を向けてくる。

ど、どうしよう…体中の毛が逆立つようなきがした。

またあんな生活に戻らなきゃならないの?

そう考えるだけで震えがとまらなくなる。

「あっ、自己紹介まだだったね」

私の様子を知ってか知らずか彼、男性は自分のペースで話を進めていく。

私はそんな彼の前で俯くしか出来ない。

「僕、君のお兄さんの下で働いてる鏡 明人っていいます。お兄さんから手紙を預かってきたので渡しにきました」